新選組が題材になる映画やドラマは日本特有?の敗北の美学みたいなものにどうしても結びついてしまっている作品が多い。
そこが新選組の魅力であることは理解できるが、思考の切り替えや固定観念の愚かさに焦点が当たらないようにも感じます、また現代の時代の流れとの比較がされていないと感じるところが多く、そもそも現代も含め戦争で生き残った敗者すべてに対して死は必要なのか?と未だに疑問に思うことがあり…
新選組が描かれた作品でも剣士の性格や行動が微妙に違っていたりもしますよね、
そういった個々の作品の魅力も含め、今作はどんな幕末の人間模様が描かれているのか⁉︎
筆者個人的にはその辺りも楽しみで鑑賞してきました。
この映画こんな方におすすめ! ~鑑賞のススメ~
- 歴史が好きな方
- 新選組が好きな方
- 時代劇が好きな方
作品あらすじ
江戸時代末期。黒船が来航し開国を要求した。幕府の権力を回復させ外国から日本を守る佐幕派と、天皇を中心に新政権を目指す倒幕派の対立が深まりつつあった激動の時代-。
武州多摩の”バラガキ“だった土方歳三(岡田准一)は、「武士になる」という熱い夢を胸に、近藤勇(鈴木亮平)、沖田総司(山田涼介)ら同志と共に京都へ向かう。
徳川幕府の後ろ盾のもと、芹沢鴨(伊藤英明)を局長に擁し、市中を警護する新選組を結成。
土方は副長として類まれな手腕と厳しい法度で組織を統率し、新選組は倒幕派勢力の制圧に八面六臂の活躍を見せる。
お雪(柴咲コウ)と運命的に出会い惹かれあう土方だったが時流は倒幕へと傾いていき・・・
池田屋事件、鳥羽・伏見、五稜郭の戦い・・・
変革の世で剣を手に命を燃やした男たちの、信念と絆。
愛と裏切り。
そのすべてを圧倒的スケールで描き切る、歴史エンタテインメント超大作!!
Filmarksより
予告編
作品情報
製作国 日本
公開日 2021/10/15
スタッフ
監督 原田眞人
脚本 原田眞人
音楽 土屋玲子
原作
司馬遼太郎 『燃えよ剣』
キャスト
土方歳三(岡田准一)武士を夢見る〝バラガキ〟
近藤勇(鈴木亮平)道場「試衛館」の当主
沖田総司(山田涼介) 土方らを慕う天才剣士
お雪 (柴咲コウ) 土方の想い女
井上源三郎(たかお鷹)土方らの兄弟子
本田覚庵(市村正親) 土方の師匠
徳川慶喜(山田裕貴)15代将軍
松平容保(尾上右近)会津藩藩主
藤堂平助(金田哲)大名の御落胤と噂の男
永倉新八(谷田歩)〝試衛館〟食客
山南敬助(安井順平)文武両道の器量人
芹沢鴨(伊藤英明)豪胆な水戸浪士
斎藤一(松下洸平)京で再会する剣客
感想・解説(ネタバレあり)
幕末の動乱期にわずか6年だけ存在し、伝説となった史上最強の剣客集団〝新選組〟はいかにして生まれたのか?
1868年土方が新政府軍から追われ、占領した蝦夷箱館の五稜郭にて土方歳三の回想語りから物語は始まる。
バラガキ
茨掻き(バラガキ)、イバラのように触れると怪我をするような乱暴な人物のこと、イバラに進んで突っ込んでいくような向こう見ずな人物などの意味でもあり、土方歳三の幼少期のあだ名としても知られる、ようは〝不良〟ですね。
幕末、武州多摩の石田村(現在の東京都日野市石田)で産まれた土方歳三、武士に憧れ続けた幼少期、と言っても当時人口の8割が一般的な百姓や町民だったことから武家以外の彼ら若者の遊びが喧嘩や賭博だったようで、喧嘩の場合はその先の強さを極めた武士へのあこがれは当時の多くの若者が憧れていたものだと推測されます。
そして当然武家にも上流から下流までの階層があったとされていますので言ってみればこの江戸時代のほとんどの男性は最低でも喧嘩やチャンバラ程度の〝戦い〟と隣り合わせで育ってきた背景を想像できますね。
喧嘩の腕を上げるためにさらに剣の道を進むものも多く、その数に比例するように各地にはたくさんの道場があったそうです。
試衛館
土方は近藤周斎が運営していた試衛館という天然理心流の道場に入門、周斎の後継ぎである近藤勇とはともに青春時代を過ごす親友でもあった。
そしてこの試衛館に通う門下生、沖田総司、井上源五郎、山南敬助、原田左之助、永倉新八、藤堂平助、彼らが後の新選組として集う主力の剣士たちでした。
新撰組
1863年に将軍家茂が上洛する際に清川八郎が発案した将軍護衛の〝浪士組〟に土方は試衛館の剣士で賛同、だが清川の倒幕魂胆が発覚し浪士組を離脱、ともに離脱した芹沢鴨率いる水戸浪士組が親交の深かった会津藩の松平容保により会津藩預かりの将軍護衛組織が発足、これが新選組の発足経緯です。
新しい武士道を選んだ組織〝新選組〟
その後、近藤勇をリーダーとした組織として志願者も含め新たに団結し尊王攘夷派と完全に対立することになる。
局中法度
新選組副長である土方は〝局中法度〟という五箇条の規律を定め、これに違反するものは切腹という厳しいものだった。
- 士道に背くこと
- 局を脱する事
- 勝手に金策を致すこと
- 勝手に訴訟を取り扱うこと
- 私闘を禁止すること
この厳しい規律には勢いで集めた新選組に対する土方の懸念もあったようです、新選組には試衛館以外にも水戸の芹沢一派、伊東派などがあり派閥による権力抗争が多かったようで、崩れる時には一気に崩壊するとにらんだ土方は内部粛清用ともいえる局中法度を制定したのでした、そしてその粛清された新選組の数は新選組が斬った人の数より多いとされています。
鬼の土方・最強の新選組という噂が瞬く間に広まるのも頷けます。
お雪
新選組としていわゆるヒットマンの仕事をしている土方は、怪我の手当てをして匿ってくれたお雪という女性に出会います。
土方はお雪の優しさに徐々に心惹かれ、仲を深めていきます。
池田家事件
1864年6月、池田屋に長州藩士がいると情報を聞いた土方は山崎という密偵を忍ばせ長州藩の人間がいるかを確認させる、確認方法は〝東に足を向けて寝る男〟だった。江戸に対し劣等感を抱く長州人は足を東に向けて寝るという。
池田屋に長州藩士がいることを確認し、彼らが京を焼き払い帝を誘拐する計画情報を知った土方らは、近藤ら先発と土方の後発にわかれ池田屋の長州藩士を襲った。
池田屋のこの戦いによってますます新選組に注目が集まることとなる、だがその後入隊した伊東の影響により元々土方と意見の食い違いが多かった山南・藤堂は伊東派になり、土方・近藤らと別れてしまう、山南は自ら脱退し去るが逃げもせず捕らえられ切腹してしまいます。
このことで伊東派が近藤の暗殺を企てていることを知った近藤は先手で伊東と藤堂を殺害します、この頃から新選組自体の歯車は修正が効かないものになっていたのかもしれないですね。
もう殺し合いの殺し合い、斬るわ斬るわ、血が飛ぶ飛ぶ、の連続シーンが続き、見ている側も一体誰を信じていいのかわからなくなってしまうようなピリピリしたシーンがずっと続きます。
薩長の同盟と大政奉還
あれだけ対立していた薩摩・長州が土佐藩士の坂本龍馬と中岡慎太郎の手引きによって薩長同盟結んだ、徳川慶喜は倒幕の機運が完全に高まったと判断し1867年に大政奉還を行い将軍職を辞することとなります。
だがもうこの火種は消えることはなく、その後も幕府と倒幕派の間で争いは続いていきます。
官軍から逆賊へ
新選組の隊員は御所の護衛を継続することになる、薩長土佐の新政府軍に追われる身となった旧幕府軍である新選組は一夜にして完全に逆賊となってしまう。
新選組が生死をかけていたのもどこか彼らの中で幕府という正義を背負ってのこと、それが一瞬にして悪になってしまう、彼らの立場でそれをすべて受け入れるのはやはり難しいよなと…
戊辰戦争
逆賊となった土方だがその後の1868年鳥羽伏見の戦いから1869年箱館戦争の戦いっぷりは燦々たる負け戦の連続でした。
鳥羽伏見の戦いが新政府軍側から描かれている、映画『るろうに剣心 最終章 The Beginning』はこんな映画 ↓↓
慶喜に見捨てられたような状況で敗退した鳥羽伏見の戦い後には土方は髷を切り、かつて局中法度を定め脱退は切腹と厳しい規律を定めた男は仲間に対し、この先も新選組に着いてくることに強制はしないことを告げる。
そしてこれまで親友として共に戦ってきた近藤が追われる新選組の状況に疲れ果て新政府軍に投降するも正体がバレ近藤は斬首されてしまう、だが土方はこのもう後がない状況にも関わらず自らの道、百姓上がりの武士道を貫くことを心に決める。
鳥羽伏見の戦いでの土方が仲間へ局中法度の強制を崩した姿勢を見て、土方が決して時代を読めない男には感じなかった、というかもし土方歳三が新選組をしていなかったら、立場が逆であったら新時代を切り開いていくそんな男だったのだろうと感じた。
蝦夷へ
土方は新政府軍から逃れるように北上し蝦夷後にたどり着く、ここで旧幕府海軍副総裁である榎本武揚らと箱館五稜郭を本陣とする蝦夷共和国で幹部をしていた、先述したがここでの土方の回想がこれまでの流れである。
ここからは作中でのリアルタイムとして物語が進んでいきます。
ここ五稜郭では負傷者の手当てをしているお雪の姿があり、偶然にも土方はここでお雪に再会することになる。
函館五稜郭
そして、維新官軍と旧幕府軍最後の戦い、土方は最後に1人で官軍のいる函館市街の本陣まで乗り込み門前で名を名乗り突撃しますが、蜂の巣状態で射殺されてしまいます。
土方の遺体は五稜郭のお雪の元へ運ばれ、エンディングへ。
最後の土方の突撃シーン、本当に土方が一人で本陣までたどり着いたのかは不明ですが、それでも最後まで土方なりの武士道を貫いたのは真実なのでしょう。
自信・力・腕自慢の若者たちが正義を掲げて時代の狭間に生きた証、銃や大砲に完全武装した新政府軍に真っ向から立ち向かった土方の心は最後まで武士の魂と共に燃えていたのでしょう。
まとめ
過激な殺陣のシーンが多く、容赦のない血が飛び人がどんどん死んでいくので、 お雪とのまったりシーンなどまったく頭に残っていないくらい容赦ない人斬り映画でした、なのでそれと対照的に今回他の役者の演技指導もしていたという岡田准一さんの殺陣はものすごい迫力で映像化されています。
お雪役の柴咲コウさんがインタビューで男性役者陣の演技が迫力ありすぎてかっこよかった羨ましかったと言っているほどです。
百姓上がりで一時は最強とまで謳われた新選組の剣士 土方歳三は時代をずらして言ってみれば
戦国時代であれば〝豪傑〟
現代であればストリートあがりの〝殺し屋〟(いるのか 汗)
といったイメージでしょうか。
激動の幕末の人間の命と血を正直に描いた作品『燃えよ剣』、徳川300年の歴史は新選組と最後まで武士の魂と共に燃えていた土方の武士道と共に幕を閉じたと言っても過言ではないのかもしれないですね。
以上、
今回もお読みいただきありがとうございました。
それではまた!
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