2021年 第93回アカデミー賞主演男優賞(アンソニーホプキンス)・脚色賞受賞作品
認知症について皆さんは考えたことがあるでしょうか、もしかしたらすでに家族の介護等で認知症患者の方のお世話をした方も多いのではないでしょうか。
私も親戚が認知症の症状で従妹が苦労していたのを見てきたので想像するくらいの大変さはわかっているつもりでした。
この映画『ファーザー』はそんな認知症を疑似体験できるような視覚と脚本構成となっています、なので介護する側では知りえなかった認知症患者本人の気持ちもわかるようになります。
この映画は難解の部類に入ると思います、集中して観ればみるほど騙された状態でラストまで行ってしまうので、ここで鑑賞するうえでの最低限の準備をして行かれることをお勧めします(^^)
この映画こんな方におすすめ! ~鑑賞のススメ~
- 認知症患者の気持ちがわからない方
- 認知症患者の気持ちを知りたい方
- 家族の介護をされている方
- 将来の自分の健康に不安な方
作品あらすじ
名優アンソニー・ホプキンスが認知症の父親役を演じ、「羊たちの沈黙」以来、2度目のアカデミー主演男優賞を受賞した人間ドラマ。
日本を含め世界30カ国以上で上演された舞台「Le Pere 父」を基に、老いによる喪失と親子の揺れる絆を、記憶と時間が混迷していく父親の視点から描き出す。
ロンドンで独り暮らしを送る81歳のアンソニーは認知症により記憶が薄れ始めていたが、娘のアンが手配した介護人を拒否してしまう。
そんな折、アンソニーはアンから、新しい恋人とパリで暮らすと告げられる。
しかしアンソニーの自宅には、アンと結婚して10年以上になるという見知らぬ男が現れ、ここは自分とアンの家だと主張。
そしてアンソニーにはもう1人の娘ルーシーがいたはずだが、その姿はない。現実と幻想の境界が曖昧になっていく中、アンソニーはある真実にたどり着く。
アン役に「女王陛下のお気に入り」のオリビア・コールマン。
原作者フロリアン・ゼレールが自らメガホンをとり、「危険な関係」の脚本家クリストファー・ハンプトンとゼレール監督が共同脚本を手がけた。
第93回アカデミー賞で作品賞、主演男優賞、助演女優賞など計6部門にノミネート。ホプキンスの主演男優賞のほか、脚色賞を受賞した。(映画.comより)
認知症とは
認知障害の一種であり、後天的な脳の器質的障害により、いったん正常に発達した知能が不可逆的に低下した状態である。
単に老化に伴って物覚えが悪くなるといった誰にでも起きる現象は含まず、病的に能力が低下して性格の先鋭化、強い承認欲求、理性的思考力衰退、被害妄想を招く症状をさす。
日本ではかつては痴呆(ちほう)と呼ばれていた概念であるが、2004年に厚生労働省の用語検討会によって「認知症」への言い換えを求める報告がまとめられたようです。
ネタバレビュー・考察
認知症のアンソニー(アンソニーホプキンス)の主観で映像と物語は進んでいきます、が、このアンソニーは81歳の認知症を患っているおじいさんなのです。
なので会う人であったり、場所だったりがぐるぐると周り入れ替わっていきます、時間軸も何本かに同じ長さで分かれているわけではなくぶつ切りにされている時間軸も存在します。
登場人物は主人公であるアンソニーと娘のアンを含め6人ほどしか出てきませんし、場面もアンソニーが暮らしているとされる自分の家が2種類出てくるだけです。
あくまで認知症の患者視点での物語なので裏を返せば、この世界観以上の出来事はありません。
ここは唯一私がネタバレするところかもしれませんが、アンソニーは最終的に娘のアンに施設へ連れてこられるのですが、アンソニーは最初からこの施設にいたのではないかと私は考察します、このあたりのネタバレは逆に知っていても面白いかもしれません。
このラストシーンにたどり着くまでかなり鑑賞者は振り回されますからね(笑)
アンは去り、もう一人の娘ルーシーはすでにこの世を去っていることを思い出したアンソニーは急に孤独感に襲われ、一時的に我に返ったところで、次は母のことを叫び出すという子供帰りの症状がアンソニーにでてくるのでした。。。
まとめ
サスペンス、スリラー、ヒューマン、このどの分野にも属する作品でありながら、観ている観客を最後まで騙し続ける(騙され続ける)脚本の力、その効果を最大限引き出すアンソニーホプキンスの圧倒的演技力はすごいとしか言いようがないですね。
『ファーザー』を時間軸を操る分野の映画で言うと、クリストファーノーラン監督の作品を思い浮かべるとわかりやすいのかな、ただ少し違うのは家族愛まではダンケルクやインターステラーでも描かれてはいたが、このファーザーがすごいというか怖いのは、その先に考えさせられる最終的なところが自分自身というところだ。
自分も将来認知症にかかり、こうなってしまう可能性を連想させてくるところはこの作品のメッセージのひとつなのかもしれないですね。
GB
今回の鑑賞劇場
2021.5.21
そういう時間を選んで鑑賞しに行っているとはいえ、劇場は基本空いています。
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