本気で、笑って、泣けて、役に立つ!! 映画『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』

終活という言葉にあまりピンとこない、あるいは終活とか考えたくもない、終活はまだ先のことだと思っている方にこそ観る価値のある作品です。

この映画を観たら、人生産まれてからの全てが終活なのかも、と思うかもしれません。

本当に良い映画でした。

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この映画こんな方におすすめ! ~鑑賞のススメ~

  • 終活はまだまだ先だと思っている方
  • 終活はまだ先だと思っている方
  • 終活している方
  • 終活を終えた方

作品あらすじ

仕事や子育てが一段落した熟年夫婦の騒動をコミカルに描いたドラマ。

結婚50年を迎える大原夫妻。

定年退職した夫の真一が家にずっといることで、妻の千賀子は夫在宅ストレス症に陥っていた。

相手への気遣いもまったくなくなり、真一は健康麻雀、千賀子は健康コーラスに通って趣味仲間にお互いの愚痴を言い合う2人は熟年離婚寸前となっていた。

そんな中、葬儀社に転職したばかりの菅野と出会った娘の亜矢は終活フェアの存在を知る。

亜矢から終活フェアへの参加を勧められた千賀子はフェアに足を運び、前向きに今後のことを考えようとするが、千賀子の終活への姿勢に、真一は「縁起でもない」と嫌がり、夫婦に新たな危機が生まれてしまう。

葬儀社の菅野役を「BOYS AND MEN」のリーダー水野勝、真一と千賀子夫妻役を橋爪功、高畑淳子、娘の亜矢役を剛力彩芽がそれぞれ演じる。

(映画.comより)

終活とは

「人生の終わりのための活動」の略。人間が自らの死を意識して、人生の最期を迎えるための様々な準備や、そこに向けた人生の総括を意味する言葉です。

社会的背景

2035年頃には日本の人口の約3の1を65歳以上の高齢者が占めるようになると予測され、 日本の社会は急速に少子高齢化が確実に進んでいくことになる。

そのため現代では高齢者の間では、周囲に迷惑をかけずに人生を終わるための準備する必要性が増した。

現代のように子供1人または子供がいない夫婦や、未婚者が珍しくない時代には、子供の世代へ大きな負担はかけられない。

昭和以前に比べて地域社会での人間関係も希薄になっており、社会現象として“終活”が広がっている。

熟春とは

終活をすました後に謳歌する、熟年の青春=熟春(じゅくしゅん)

ネタバレビュー・考察

最初に言ってしまうと、下は10代から上は老年期までのすべての年代の日本人が、笑って、泣けて、さらに見終わった後になぜか〝役に立っている〟という作品です。

主人公の新人葬儀屋の菅野涼太と熟年離婚危機の大原夫婦が〝終活〟というテーマとともに成長していくヒューマンコメディです。

大原家

熟年夫婦である大原真一と千賀子は割とどこにでもいるような昭和夫婦で、何かあるごとに喧嘩をしています、その理由も世間にありふれたような些細な事が原因で、娘の亜矢はどちらかと言うと母親よりなのですが、両親をとても愛しています。

昭和夫婦の典型的な亭主関白である真一は、妻の千賀子を家政婦のように扱います、傍から見ていても少し引くくらいの亭主関白っぷりです。

そんな家族の日常になぜか親近感が湧いてきます。

葬儀屋とビジネス

葬儀屋の菅野涼太はIT関連の会社が倒産し葬儀屋に再就職した新人スタッフ、お昼に大原亜矢の移動キッチンカーで食事していたことで大原家と知り合い終活を勧めるようになる。

葬儀屋の終活フェアのキャンペーンで千賀子は葬儀の際に流す動画の無料作成の権利を抽選で当てる。

涼太が大原家に案内した終活セミナーのイベント、真一は「縁起でもない」と受け付けないが、千賀子は「見るだけでも」とここでも意見が合わず喧嘩になる。

真一はまじめでやさしい性格の涼太に「あんたの目的はこの家の葬儀をすることなんだろ?」と問いかけ、それに対して涼太は何も言えなくなってしまう

悪気あって勧めているわけではない涼太だが、受け取る側によってこのように冷たい対応をされることを涼太が身をもって知るシーンであった。

亜矢から「天国ってあると思います?」と聞かれた質問、一般人が抱くもしかしたら葬儀屋さんってこういう事知っているのかも、っていう質問に涼太は「さあ。。。」と答えられない涼太、というかプロとして一番言ってはいけない言葉を返してしまう涼太です。

このあたりは、若い勢いや誠実さだけではカバーしきれない涼太の経験不足が露呈されたシーンでしたね。

そんな涼太も上司である桃井のアドバイスを受けながら終活の奥深さを知り、過去の自分自身と向き合うようになり成長をしていく、このまじめでやさしい涼太の成長も見ていて微笑ましく感動するところでもある。

菅野家

涼太は大学時代に母親を病気で亡くしている、不治の病で病床で苦しんでいる母に対し父 菅野敬一の「もう母さんを楽にしてあげたい…」おそらく寝たきりで意識もない母親に延命治療の停止を決めたのでしょう、しかし納得いかない涼太はこの父の決断が原因で父親のもとから去り、10年以上父と疎遠になっている。

涼太の葬儀屋にある日父が涼太を訪ねてくる、父 敬一の勤務先の介護施設に涼太が営業キャンペーンに来ていた時に偶然涼太を見かけていたのです、父の息子に対する気持ちは私は痛いほどわかるのでこのシーンでの父 敬一が涼太を思う気持ちは痛いほど伝わりました。

息子には嫌われているだろうな、でも息子を愛している、どんなに嫌われても息子を思わない日など一日もなかった。

立派に成長している息子の姿をみて、安心して新しい伴侶を紹介できる、、、でもまだ嫌われているだろうな。。。という敬一の決意の中にある少々の不安な気持ちをここでは推察できる。

敬一役の西村まさ彦さんの演技はさすがで、まさに世の中の父親が共感するであろう素晴らしい演技を見せてくれています。

敬一は涼太に新たな婚約者を紹介したいと言うが、案の定涼太は帰ってくれと冷たくあしらう、敬一は自分の携帯Noを書いた紙を置き去っていく。

この親子、二人ともまっすぐな性格と誠実さがとても似ています。

歯痒いシーンではあるが、見ていても絶対に分かり合える、この親子なら大丈夫という気持ちにもなれた。

大原家の分岐点

ある日、大原千賀子は趣味のコーラスグループの練習後に雑談している際に倒れてしまい、病院へ救急搬送される、診断の結果軽度の脳梗塞で数日の入院で退院できるとの知らせに大原家は一安心する。

夫の真一は突然家にいなくなった妻の存在の大きさと自分が家事が何もできない無力さを痛感し落ち込んでしまう、そしてふと電話の隣に置いてある千賀子が動画編集を依頼するために出しっぱなしにしてあった昔のアルバムを見つける。

真一は手に取ったアルバムを開き、妻千賀子とすごした日々を思い出し千賀子の有難みを思い知る。

そして妻が勧めてくれたものの、一度は断った葬儀屋の終活キャンペーンの抽選に当たった無料動画作成サービスを受ける決心をし、自ら涼太のいる葬儀屋を訪れ涼太にあらためて動画作成の依頼をし、先日の件で涼太にきつく当たってしまったことを謝った。

千賀子が退院し家に戻ってくると、真一は照れ臭そうに葬儀屋に動画編集の依頼をしてきたことを千賀子に報告した。

そしてこのタイミングで真一は熊本の実兄の突然の訃報をうけショックを受ける。

真一の中でこれまでの人生とこれからの人生を見つめなおすことになったのだろう。

大原家は徐々に一丸となり周りを巻き込みながらも皆に笑顔をあたえるような存在になっていく。

最初は千賀子の体調を案じ一人で熊本へ行く気だった真一だが、千賀子は自分も行かないわけにはいかないと結局家族三人で葬式に出席するために熊本へ行った大原一家、真一は久しぶりに見る故郷の景色を妻 千賀子と亜矢と楽しんでいた。

大原千賀子さんの妻としての責任感と真一を支えてきた思いには敬服します。。。

真一と千賀子は結婚50年目の金婚式を涼太の葬儀屋の主催で依頼し、そこで作成依頼した動画を流してほしいと相談を持ち掛ける。

涼太の思い

元々IT会社で簡単な動画を編集していた涼太は大原夫妻の依頼案件を担当し動画作成に動き始める。

動画を作成するために大原夫妻のいろいろな資料を集める涼太。

このあたりからコメディ色の強かった物語から、涙を誘う感動物語へと徐々に変わっていく。

大原夫妻の馴れ初めや、真一が家族のために心を入れ替えた姿を観て、涼太の心にも父 敬一の気持ちが徐々にわかるようになってくる。

上司である桃井と出先の帰りに母親のお墓によりたいと言い出す涼太、桃井は一緒に行くと言い母親のお墓で桃井にかつて亜矢にされた同じ質問をする「天国ってあるんですかね?」と、

桃井は「あるに決まってるじゃん、何万年も前から人が死んだら儀式をしているんだよ、天国がなかったらそんなこと続いてないよ。」と。

涼太はこの時、自分が答えられなかった質問に淡々と答える上司の桃井に感心し、きっと葬儀屋という自分の仕事に誇りを持ち始めたのでしょう。

葬儀社の金婚式

大原夫妻の金婚式には家族のほかにも、真一の麻雀仲間・仕事の同僚・熊本の同級生、千賀子のコーラスグループ仲間・同級生など、たくさんの仲間が祝いに駆けつけ歓談しスピーチを行なっていた。

そしてついに二人の生い立ちから今にいたるまでの動画が流れる時が来た、亜矢は涼太のほうを見て涼太も亜矢に相槌を打つ。

観ているこちらにも緊張が走ります。

二人の動画はチューリップ財津和夫さんの『青春の影』をBGMにノーカットで流れました、

そしてここで涙腺崩壊しました。。。

10代の方も、20代の方も、30代、40代、50代。。。それぞれが大原夫婦の同じ年代の映像を注視するだろう、そこでおそらく『自分達と同じだ。。』と思うだろう、よくある結婚式のプロフィール映像と違うのは、見ている側の捉え方である、目の前にいる老夫婦は自分たちと同じような青春を過ごし、今現在も生き抜いている、この映像は未来の自分たちの姿なのだと、自分を重ねて想像することができるのではないか。

真一と千賀子の赤ん坊の姿から青春を謳歌していたころの若さ溢れる輝いた笑顔はいつの時代も何も変わらないんだなと、そう思うことができた瞬間に人間は成長するのだと思います。

サプライズ

金婚式も終わりに差し掛かったころ外国の青年が式場に姿を現す、その青年は真一のことを「お父さん」と言い、不穏な空気が会場内を包む。

真一は慌てて外人青年を会場の外へ連れ出し、家族も状況がわからずに真一の隠し子疑惑を受け入れられずに真一へ詰め寄る。

真一は誤解であることを説明し、仕事でフィリピン?に滞在していた時に親のいない子供の面倒を見ていたことを告白し、一同は安堵する。

真一の見えなかった男らしさと優しさ、フィリピンの息子が金婚式へ駆けつけたこともいい話ですね(^^)

まとめ

敬一役の西村まさ彦さんは登場時間こそ短かったですが、作品中の家族の愛と絆を表現するための重要な立場で最高の演技をされていたと思います。

定年後夫婦の楽しい過ごし方。

久しぶりに笑あり涙ありの素晴らしい作品を観れました。

金婚式で真一が最後にスピーチしていた言葉が印象的でした。


「思い出ってのは歳とらねぇんだよなぁ。。。」


映画『お終活 熟春!人生、百年時代の過ごし方』を観終わりこう思います、

人間は皆、

同じように違う人から産まれ、

同じように違う道を進み、

同じように違う人が出会い、

同じように違った人生の幕を閉じる、

だから人生は価値があると、価値のない人生などないんだと。

GB

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