昨年コロナ禍で極力劇場へ足を運ぶ事を自粛していた中で観れていなかった作品が最近やっとネット配信されてきました。
観たかった作品で真っ先に頭に浮かんできたのがこの『罪の声』でした。
第44回日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞作品。
1984年にテレビで取り上げられていたあのグリコ森永事件、当時8歳だった私はスーパーからお菓子が消えた事や、連日TVで流れていた〝かい人21面相〟の脅迫文、狐目の男のモンタージュ写真などが幼心に不気味な事件だった事を記憶しています。
この作品を観てそれを思い出し、思わずゾッとしました。
事件の脅迫電話に子どもの声が使われた事実を知って、自らと同年代のその子どもの人生に関心を抱き原作小説を書き上げた塩田武士さん、
1979年生まれの塩田さんと同年代の方(私も1976年生まれで近い年代です。)は、あの犯行声明テープに吹き込まれていた声の主である3人の子供達と同年代だという事を知った上で、この『罪の声』を観ていただきたい。
後半から怒涛の展開で、目を覆いたくなるほどの悲しみに襲われます。。。
当時の事件を知らない方は簡単な予習として、知っている方はあの事件の不気味なイメージが少し晴れるかもしれないですので、是非これから動画配信サービスやDVD・ブルーレイで鑑賞される方はこのブログに目を通していただき鑑賞してもらえたら幸いです。
(注:ネタバレビュー・考察 以降ネタバレ含みます)
この映画こんな方におすすめ! ~鑑賞のススメ~
- すべての日本人
- グリコ・森永事件を知らない方
- グリコ・森永事件の真実を知りたい方
作品あらすじ
実際にあった昭和最大の未解決事件をモチーフに過去の事件に翻弄される2人の男の姿を描き、第7回山田風太郎賞を受賞するなど高い評価を得た塩田武士のミステリー小説「罪の声」を、小栗旬と星野源の初共演で映画化。
平成が終わろうとしている頃、新聞記者の阿久津英士は、昭和最大の未解決事件を追う特別企画班に選ばれ、30年以上前の事件の真相を求めて、残された証拠をもとに取材を重ねる日々を送っていた。
その事件では犯行グループが脅迫テープに3人の子どもの声を使用しており、阿久津はそのことがどうしても気になっていた。
一方、京都でテーラーを営む曽根俊也は、父の遺品の中にカセットテープを見つける。
なんとなく気になりテープを再生してみると、幼いころの自分の声が聞こえてくる。
そしてその声は、30年以上前に複数の企業を脅迫して日本中を震撼させた、昭和最大の未解決人で犯行グループが使用した脅迫テープの声と同じものだった。
新聞記者の阿久津を小栗、もう1人の主人公となる曽根を星野が演じる。
監督は「麒麟の翼 劇場版・新参者」「映画 ビリギャル」の土井裕泰、脚本はドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」「アンナチュラル」などで知られる野木亜紀子。第44回日本アカデミー賞最優秀脚本賞受賞。
(映画.com解説より抜粋)
グリコ・森永事件とは (注:映画では“ギンガ萬堂事件”となっています)
1984年(昭和59年)と1985年(昭和60年)に、日本の阪神間(大阪府・兵庫県)を舞台に食品会社を標的とした一連の企業脅迫事件のことをいいます。
犯人が「かい人21面相」と名乗ったことから、かい人21面相事件などとも呼ばれています。
2000年(平成12年)2月13日にすべての事件の公訴時効が成立し、完全犯罪となり警察庁広域重要指定事件では初の未解決事件となった。
ネタバレビュー・考察
興味ある題材ネタの作品だが、序盤の展開からこのまま淡々と進んでいくのか不安になった、TVドラマのサスペンスとあまり変わらないのかなと、およそ1時間たった時も「これ題材に乗っかって作っちゃっただけのやつかなぁ」と正直思ったほどでした。
新聞記者の阿久津英士(小栗旬)が最初は乗り気ではなかったが徐々に刑事ばりに調査を開始を始める、一方京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)も問題となったテープをタンスの奥から偶然見つけ、テープを聞くと自身が犯行声明に使われた3人のうちの1人であることを知る。
ここまではなかなかゆっくりとした展開でのんびりとした空気さえ感じるほどだった。
だがその心配はすぐに吹き飛んだ、調査を続ける阿久津と曽根俊也が出会い、事件の真相に深く入り込んでいくのと同時に怒涛の展開となっていく。
さすが最優秀脚本賞!!
犯人グループの特定、残り二人の音声テープの子供は今どうしているのか、などが明かされていきます。
犯行グループの主格はテープ音声主である3人の子供の叔父と父親で、60年代の学生運動からの残党勢力が主であったが、そのうちに暴力団が絡み始め主導権を握られていきます。
過激な政治的思想ではあったものの、初めは正義感から行っていた活動が収拾がつかなくなり犯罪にどっぷりつかってしまい暴力団に牛耳られ自分達の子や甥の将来をも巻き込んでしまう事態へとなっていく。
何の罪もない子供達が親にそそのかされるまま犯行声明文を読まされ声を吹き込んだあのテープ、運よくそのテープの存在を現在まで知らずに成長した少年(曽根俊也)がいる一方で、その宿命を背負ってしまったせいで、外国で翻訳家になる夢を抱きながら闇の手から逃げきれずに志半ばで命を落としてしまう姉の少女(生島望)と、生きる希望さえ失うような過酷な人生を母に会うことだけを目標になんとか生き抜いてきた弟の少年(生島聡一郎)、この姉弟と一人の少年が歩んだ人生。
この映画を私が親の立場として観たら、これを史実として受け入れることがつらいです。
望や聡一郎のことを考えたらね。。。今こうしてこの文を書いていても悲しくなってきます。
映画『罪の声』は衝撃と感動、そして深い悲しみを受けた映画でした。
まとめ
あまりにも知らなさすぎた〝グリコ森永事件〟。
1984年、インターネットもなかったあの時代の未解決事件、この映画の登場人物である新聞記者の阿久津のように専門職として調べたり、またはこういったモーションを偶然にでも誰かが起こさない限りは時効になった事件はそのまま時が過ぎ、知られていない真実はその後触れられることもないまま過去のものとなっていく。
作品どおりのストーリーであるなら本当に悲しすぎる事件です…
この事件について調べに調べたと言われている原作者の塩田武士さんが、各事件の発生日時、犯人による脅迫状・挑戦状、事件報道は「極力史実通りに再現しました」と単行本の著者コメントには記載されています。
最後に阿久津が言ったこの言葉は、いろんな局面でなんだかんだ言われまくる〝マスコミ〟の重要性を感じさせるセリフでした。
「これは遠い昔の話だろうか、今も毎日のように事件は起きている。
勝手な理屈で人生を奪われるのはいつも、弱くて小さなものたちだ。
他人の人生に踏み込む事が、記者の宿命ならば、私は彼らに寄り添っていこう。
深淵に追いやられた小さな声に耳を澄ませ、文字にして伝えていこう。そう彼等に誓った。」
阿久津英士
キャスト陣も皆さんとても素晴らしい演技で、特に生島聡一郎役の宇野祥平さんの演技にとても引き込まれました。
世の中に起こる大小様々な事件、その中でも未解決事件の真実のカギを握るのは、警察でも司法でもなくもしかしたらマスコミの方々なのかもしれないですね。
正義感からおこした政治的活動、その身勝手な正義感の行動の末に、巻き込まれた子供が一生背負う不幸の大きさは計り知れません。
家族に時効は関係ない時効など存在もしないと、
真の正義か盲目の正義なのか、私たちはそれを判断できる世の中にしなければ、そういう時代にしなければいけないなと思わずにはいられませんでした。
GB
主題歌
『振り子』 Uru
... 夢と現実の狭間で ぶら下がって足を浮かせたまんま 風が吹けば吹かれたほうへ流されて 我武者羅に走った汗を ただの塩にしてきた人生も ... 愛を知って生きる意味を知った... (SonyMusic Uru 『振り子』より歌詞引用)
Uruさんのこの歌が映画のエンドロールで本気で涙を誘います。。。
今回の鑑賞劇場
※動画配信サービスUNEXTにて視聴。
映画『罪の声』視聴可能動画配信サイト👇(2021/4/26現在)
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