アーカンソーの国から 映画『ミナリ』

2021年 第93回アカデミー賞 最優秀助演女優賞受賞作品(ユン・ヨジョン)

セリフの大半が韓国語のアメリカ映画。

ちなみに前回アカデミー賞最優秀作品賞をとったパラサイトは韓国映画です。

アメリカのルーツである移民というワードに多くのアメリカ人が共感し反響を呼んでいるという作品、

1980年当時のアメリカに農業移住してきた韓国人家族とミナリとは。

この映画を観た日本人にはどこか見慣れたストーリーに感じる方も多いかもしれない。

移住してきた土地を開拓して農業をする話、それを取り囲む家族、家族構成までそっくりなそれをこの作品を観終わったら思い出すでしょう。

(注:ネタバレビュー・考察 以降ネタバレ含みます)

この映画こんな方におすすめ! ~鑑賞のススメ~

  • 『北の国から』が好きな方

作品あらすじ

1980年代のアメリカ南部を舞台に、韓国出身の移民一家が理不尽な運命に翻弄されながらもたくましく生きる姿を描いた家族映画。

2020年・第36回サンダンス映画祭でグランプリと観客賞をダブル受賞した。

農業での成功を目指し、家族を連れてアーカンソー州の高原に移住して来た韓国系移民ジェイコブ。

荒れた土地とボロボロのトレーラーハウスを目にした妻モニカは不安を抱くが、しっかり者の長女アンと心臓を患う好奇心旺盛な弟デビッドは、新天地に希望を見いだす。

やがて毒舌で破天荒な祖母スンジャも加わり、デビッドと奇妙な絆で結ばれていく。

しかし、農業が思うように上手くいかず追い詰められた一家に、思わぬ事態が降りかかり……。

父ジェイコブを「バーニング 劇場版」のスティーブン・ユァン、母モニカを「海にかかる霧」のハン・イェリ、祖母スンジャを「ハウスメイド」のユン・ヨジョンが演じた。

韓国系アメリカ人のリー・アイザック・チョンが監督・脚本を手がけた。

第78回ゴールデングローブ賞では、アメリカ映画だが大半が韓国語のセリフであることから外国語映画賞にノミネートされ、受賞を果たす。

第93回アカデミー賞では作品賞、監督賞、脚本賞など計6部門にノミネート。祖母スンジャを演じたユン・ヨジョンが助演女優賞に輝いた。
(映画.com解説より抜粋)

アーカンソー州ってどこ?

アメリカ合衆国アーカンソー州

ミナリとは

ミナリとは韓国料理によく使われる東アジア原産の植物です。

“ペニーワート”(チドメグサ属の草)や日本では“セリ”とも呼ばれ、春の七草の一つ。

苦味のあるペッパーのような味がするのが特徴。

ネタバレビュー・考察

主人公ジェイコブはアメリカンドリームを夢見て家族4人(妻モニカ、長女アン、次男デビッド)でアメリカに移住してきた韓国人。

妻モニカはここで先の見えない仕事をするジェイコブや心臓を患う息子デビッドもいることから、病院から遠いこの田舎の地でトレーラーハウスの中に住むことに、序盤からすでに疑心暗鬼になっている状態で物語は始まります。

モニカは、「ここにはそう長くいるつもりはないわ、病院に近い街でお婆ちゃんと一緒に暮らしましょうね」とデビッドに話しかけていました。

ここでのモニカの女性ながらの考えというか性格は、夢を追う男であるジェイコブとは決して相性が良い関係ではなさそうです、男女の意見の摩擦はいつの時代も変わらずにあるものなのですね。

家族の現状

引っ越してきてまもなく、台風(トルネード)がジェイコブ一家を襲います。

停電と住居である中古のトレーラーハウスは雨漏りに見舞われ、アメリカの大自然の洗練を受けてしまいます。

そしてこのことがきっかけで妻のモニカは我慢の限界に達し、ジェイコブと子供達の前で大喧嘩をしてしまいます。

ジェイコブとモニカは農業だけで生活できないので孵卵場でも働いています、なので1番耐え時なのは最初の今であるのはお互いに理解しているはずなのに、やってしまうんですね夫婦って。

条件

モニカがジェイコブに突きつけた、〝引っ越しをしない条件〟はモニカの母スンジャと一緒に暮らすこと。

理由はスンジャに子供の面倒をみてもらえればモニカ自身ももっと働けるためのようです。

これまでは女の主張ばかりかかげている妻のようなイメージしかなかったのでモニカを見直した。

自分の事だけ考えて逃げるように離婚することは簡単だけど、子の将来のことを考えたら離婚は最悪な選択であることにモニカは気づきしっかり子供のことを考えたうえでモニカは一番良い選択をしたのだと思う。

スンジャ婆ちゃん登場

さあ、ここから韓国から来たスンジャ婆ちゃん(ユン・ヨジョン)との同居がはじまる。

スンジャはこのギクシャクした家族に少しずつ忘れていた大事な物を気づかせ、そして少しづつ奇跡を起こしていく。

スンジャは毒舌で料理などもしない、持ってきたおもちゃが日本の花札であることから、日本統治時代を知る婆ちゃんなのでしょう。

孫であるデビッドも初対面から花札で賭け事を教えてくる婆ちゃんに、どこかイメージしていたお婆ちゃんと違い違和感を感じるため、スンジャに対してなかなか心を開かない。

スンジャはある日デビッドと森へ散歩中、見つけた小川に韓国から持ってきたミナリの種をまき「ここはいいミナリが育ちそうだ」と言う。

デビッドはある日いたずらでコップに入れた自分のおしっこをスンジャに飲ませてしまうが、スンジャは怒りながらも、かわいい孫を包み込むような優しさで毎日接している。

どこか憎めない性格のスンジャ婆ちゃんに、アンとデビッドも徐々に打ち解け心を開いていく。

一難去ってまた一難

希望に胸を膨らませて住み始めた土地だったが、ある時農業用の水が枯れて出なくなってしまう。

焦るジェイコブ、危惧していた事態に頭を抱える妻モニカ、そしてこっそり生活用水を畑へ使い始め、とうとう水道も止められてしまう。

そんな中でまたもやトラブル、ジェイコブはなんとか韓国系のお店に初の出荷作物を卸す契約が取れていたが、急にキャンセルの連絡がはいってしまう。

ジェイコブは発狂し取り乱し、いよいよ一家は背水の陣を敷くことになる。

そして元気だったスンジャも脳卒中で倒れ、後遺症の残る身体になってしまう。

幸と不幸

ある日、息子デビッドの診察の為に街の病院へ家族で出かける、その帰りの足でジェイコブはお客さんの店へ品物を売り込みに行く計画だ。

病院の駐車場に着き、車を止めるにも暑さで積んでいる野菜が腐らないか心配するジェイコブは診察を急ぐ家族を先に降ろし、地下の駐車場へ車を移動させる。

だが心配なジェイコブは結局病院の中まで納品する野菜が入った段ボールを大事そうに抱えて持ってきた、モニカの軽蔑のまなざしを食らうジェイコブだがジェイコブにしてみれば家族の運命がかかっている段ボール箱なので必死なのは理解できます。

幸いにも息子デビッドの症状は回復しており、その回復要因は現在の環境が良くそれを変えないほうが良いとの医師の見解だった。

ジェイコブは家族を連れ、そのまま病院から韓国の食料品スーパーへ野菜を売りに行き、そこで見事取引契約を成立させる。

だがモニカはジェイコブがお客と契約した後、車に乗り込む前にジェイコブを引き留めてついに別れ話を持ち出す。

もう遅かったと言うことなのか、モニカは決意をしているようだった。。。

差別と移民

アメリカでは人種差別がひどかった事から、1965年から初めてアジア系の移民が法律で認められたようです。

この映画『ミナリ』の時代設定である1980年代では、まだまだその差別の名残は根強くあったのでしょうね。

ジェイコブがアーカンソー州の買った土地は前の持ち主も農業を始めたがうまくいかずに自殺してしまったという土地だったらしく、ジェイコブ一家はアメリカ人から曰く付きの土地を買わされていたという事です。

ミナリが与えてくれた勇気

モニカが別れ話をした後の重い空気のままジェイコブの運転する車は住居の地へ向かうが、到着するとなんと収穫した野菜を保管している納屋が燃えている、ジェイコブはスンジャを救出し急いで小屋に飛び込み野菜を抱えて運び出す、モニカも来ようとするのですがジェイコブが「来るんじゃない!」と叫ぶ、だがモニカは躊躇せずに燃えさかる納屋へ飛び込みジェイコブと野菜を運び出す。。。

別れ話をしたばかりの夫をサポートしているモニカに感動しました。

火災の原因は留守番をしているスンジャが外でごみを燃やしていた火種が藁に燃え移り納屋まで燃えたのが原因でした。

もう手が付けられないほど燃える納屋、なんとか脱出したジェイコブとモニカは抱き合います

スンジャは後遺症もあり茫然としてどこかへ向かって歩き出して行ってしまう、自分のしてしまったことに負い目を感じているようだった。

森へ向かって歩いているスンジャを発見して「おばあちゃん!!戻ろう!!」とアンとデビッドの孫2人がなんとかスンジャを止めスンジャは涙を流す。

セリフにはありませんが、「仲良くなれた大好きなおばあちゃん、これからは僕らがおばあちゃんを守るよ」とアンとデビッドが心の中で言っているように感じました。

最悪な状況が続いたけれど家族は一つになれた、でもゼロからの出発、、、でもいける!!

そんな前向きな気持ちになれたのはスンジャおばあちゃんのおかげ、ジェイコブとデビッドがあの小川で、「おばあちゃんが植えてくれたミナリだな」と会話しているのを見てジェイコブ一家にはもう迷いがないことを確信した、そしてスンジャおばあちゃんは旅立ったんだなと。。。

映画『ミナリ』は家族の協力と団結することで乗り越えられる力が何倍にもなることを教えてくれる作品でした。

まとめ

リー・アイザック・チョン監督は日本の大ヒットアニメ『君の名は』の実写版を制作している監督で、作中のデビッドが当時の監督なんです。

映画の舞台である1980年代は、韓国人の移民で農業をやるのは珍しかったようです。
では他の人はどんな仕事に従事していたのかと言うと、主に当時の韓国人移民は酒屋(今のコンビニ)やカツラ屋で働く人が多かったようです。カツラ屋では当時からアジア人の毛髪が綺麗で売れた為だったとか。

アメリカ人のルーツである移民というワードに多くのアメリカ人が共感し、大反響を呼んでいるというこの映画『ミナリ』、エンドロール最後に〝すべてのおばあちゃんへ捧ぐ〟という言葉が映し出されます。

いろんな経験をして生きてきたお婆ちゃんだからこそ気づかせてくれて取り戻せた家族の絆。

おばあちゃんが水辺にまいてくれたミナリの種がミナリになり、力強くこの家族とともに生きていく姿を考えたとき、初めてこの映画が伝えたかった家族愛がわかったような気がした。

GB

cinemacafe.netより画像引用

今回の鑑賞劇場

MOVIX清水

シネコンあるあるですが、駐車券認証機に通すの忘れずに!!(基本シネコンがある商業施設は広いので、チェックするの忘れてまた認証機のあるシアターに戻っている間に時間超過して駐車料金が増えてしまう場合もあるので。)

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